野球の神様

今年3月、第82回選抜高等学校野球大会2日目の第1試合、開星(中国・島根)−向陽(21世紀枠・和歌山)戦で、敗れた開星・野々村直通監督が試合後のインタビューで「21世紀枠に負けたのは末代の恥。腹を切って死にたい」などと発言、さらに謝罪会見に場にふさわしくない服装で現れたことから猛烈な批判を浴び、辞任に追い込まれるという事件が起った。開星はこの逆境を乗り越え、夏も甲子園に帰ってきたが、1回戦の仙台育英(宮城)戦、5−4とリードして迎えた9回二死満塁の場面で、日野(東北学院大進学)の当りを中堅・本田がまさかの落球で二者が生還して育英が逆転。その裏二死一、二塁のチャンスで糸原(明治大進学)の大飛球を育英の左翼手・三瓶(東北学院大進学)のファインプレーに阻まれてサヨナラならず。野球の怖さと同時に野球の神様はちょっとやそっとじゃ許してくれないという事を思い知ることとなった。ちなみに新チーム発足後の開星は秋季島根県大会初戦(2回戦)で県立の矢上に敗れ、来春のセンバツへの出場は絶望となっている。さらに付け加えると、秋季中国大会は島根で行われたが島根代表の4校(松江商、大社、出雲、安来)はすべて初戦敗退。これも開星事件の影響なのか…。
さて、セ・パともに混戦となった今年のプロ野球だが、開星と同じ立場に置かれ、野球の神様に見放されたチームがある。埼玉西武ライオンズである。
ご存じのとおり、今年の西武は“デーブ”こと大久保博元二軍打撃コーチの二軍選手に対する暴力行為が発覚(その後球団本部長付に降格→解雇)、前半戦から快調に飛ばしていたチームはリリーフ陣の不調で2年ぶりの優勝を寸前で逃し、クライマックスシリーズでも千葉ロッテに2試合連続で逆転負けを喫してシーズン終了という屈辱を味わったわけだが、実は21年前にも今回と同じような状況でチームに打撃を与える事件が起き、優勝を逃しているのをご存じだろうか。
1989年(平成元年)、この年のパ・リーグは西武、近鉄バファローズ、オリックス・ブレーブス(前年秋に阪急電鉄から球団譲渡)の3強が最後の最後まで緊迫した優勝争いを展開。最終的に10.12ダブルヘッダーで西武を粉砕した近鉄が129試合目で優勝を決め、西武は85年からの黄金時代でただ一度のV逸を記録することになったのだが、シーズン中に当時打撃コーチとして在籍していた土井正博(来季より西武一軍ヘッド兼打撃コーチ)が賭博の容疑で逮捕、解任される事件が起こっている。この年の西武は正捕手・伊東勤がキャンプ最終日に右足首を故障して戦線離脱、工藤公康も前年の不振を引きずり前半戦を5割でターンするなど苦戦、後半戦に入って猛追撃を見せ、パ・リーグ史上初の5連覇も視野に入っていただけに*1、何とも悔やまれる1年となった。
ちなみに、89年と言えば当時入団4年目の清原和博がロッテ戦で平沼定晴死球に激怒、バットを投げつけて退場処分を受けた年でもある。土井は死球を避ける技術を清原に教え切れなかったことを後悔し、96年の現場復帰後松井稼頭央らに死球を避ける技術から教えたとか…。
それにしても開星といい、西武といい、不祥事を起こしたチームを野球の神様はしっかり見ているんですね。見ている限り社会的な不祥事を起こした学校はその後低迷する傾向があるような気がするし…*2

*1:もし89年も優勝していたら、西武は巨人のV9を超えるV10を果たしていたことになる。

*2:2000年の敦賀気比とか、2005年の明徳義塾とか…