LPSAからの緊急声明

第67期順位戦A級9回戦は3月3日、東京・将棋会館で一斉に指されたが、そのうちの1局、郷田九段−木村八段の中継担当者が変更になった。
筆者は初め、気に留めていなかったのだが、家に帰ってネットサーフィンをしているとどうも様子がおかしい。それはLPSA日本女子プロ将棋協会)のHPに次のような文が掲載されていたからだ。以下、全文を引用する。

緊急声明
平成21年3月3日
LPSA名誉理事長・弁護士 錦織淳
 本日午前、毎日新聞朝日新聞主催の名人戦順位戦インターネット中継に関し、きわめてゆゆしき事態が発生いたしました。このインターネット中継の業務は、特殊な技能と経験を有するものであり、本業務の第一人者であり、LPSAのIT担当である松本博文氏が、毎日新聞単独主催であった2003年5月から委託を受けた業務であります。朝日新聞との共同主催になって以降も、まさしく本日この瞬間に至るまで、松本氏とのこの業務委託契約は、いわゆる継続的契約として、法的にも有効に存続したものであることはもちろん、実際上も円滑に遂行され、多くの将棋関係者や将棋ファンに高く評価されてきたものであります。

 ところが、この件に関し、松本氏より再三にわたって相談があり、日本将棋連盟の主要な役員より、この名人戦順位戦インターネット中継を事実上中心となって運営している毎日新聞に対し、不当な圧力が加えられ、「松本氏をこのインターネット中継業務からおろせ」との執拗な要求がなされていることが判明いたしました。私自身が毎日新聞担当者と直接お話をいたしましたが、「日本将棋連盟からの要求を拒絶した場合に、インターネット中継現場において大変な混乱が起きる、そのことはこれまでの将棋連盟関係者の言動により強く懸念される。ついては松本氏には中継現場には入らず、後方支援という形にしてほしい。この要請が受け入れられない場合は、当日の松本氏への業務委託を取り消さざるを得ない」とのことでありました。

 このことは、法律的に見ても違法であるにとどまらず(継続的契約に不当な圧力を加えこれを中断させたことは、明確な業務妨害であります)、社会道義的にみてもあまりにも理不尽なことと言わざるをえません。今日、様々な公益法人のあり方が社会的注視を受けている現状において、しかも日本の伝統的文化を継承・発展させていくべきこの分野において、かかる非道な行為がおこなわれたことは、それ自体驚愕すべきことであり、社会的に指弾を受けて当然と言わなければなりません。

 なお、日本将棋連盟関係者は、「この問題は毎日新聞と松本氏との契約問題である」「将棋連盟は関係がない」との見解であるやに漏れ聞いておりますが、問題はそのような毎日新聞と松本氏との業務契約に対し、不当な圧力を加え、その業務の遂行を松本氏が引き続きおこなうことを困難ならしめたことにあります。よってそのような弁解が許容されるはずはありません。

 また、このような、不当な圧力が加えられたことに関しては、数多くの客観証拠が残されていることを合わせて指摘したいと思います。もちろん、このような不当な圧力が加えられるに至ったそもそものいきさつも含め、事実関係について調査をおこなった上でのこの声明の発表であることも、ご理解賜りたいと存じます。

 本日起きた事態をいち早く皆様にお伝えし、松本氏が従前通りの業務を引き続き遂行できますよう、将棋関係者ならびにファンの皆様方のご支援を賜りますことを心からお願い申し上げます。

以上


リンク元こちら

また、松本氏のブログにも同文の声明が掲載されている。


いったい日本将棋連盟は何をしようというのか。将棋界を支えているのは誰なのかということを忘れているのか。いったい何時から日本将棋連盟は将棋記者に対してこんな態度を取る団体になったのか。はっきり言ってこれは暴挙と言うよりない。


また、もう一つ注目したいのは、松本氏がLPSAのIT担当である、ということだ。これって日本将棋連盟によるLPSA叩きの一環なんじゃないのか?と考えても、何ら不思議ではない。
昨年、女流名人位戦のイベントで、当初LPSA所属の女流棋士日本将棋連盟女流棋士会所属の女流棋士の出演が予定されていたが、その後日本将棋連盟から主催者側へ申し出があり、LPSA所属棋士の出演がキャンセルになった、という経緯がある(このときの声明文はこちら)。また、最近では、昨年日本将棋連盟からLPSAに移籍した船戸陽子女流二段が朝日杯将棋オープン戦準決勝・決勝公開対局の大盤解説の聞き手を予定されていたにも拘らず、直前になって別の女流棋士に変更させられるなど、日本将棋連盟はLPSA女流棋士に対して、棋士として見ていない扱いをしているような印象を受けてならない。盤の前ではみんな平等なのに…。


何にせよ、このような状態が今後も続くようでは、将棋ファンは光速流の如く離れていくだろうし、日本将棋連盟の目指す公益社団法人化も夢のまた夢である、ということを連盟幹部は早く気付くべきだ。


追記。将棋思録〜あり得べき世界の、そのあり得べき理由について、問う。 様、補足リンクありがとうございます。