まさか…こんなこと…〜第68期順位戦A級8回戦一斉対局〜

羽生善治名人への挑戦権を決める、第68期順位戦A級(毎日新聞社朝日新聞社主催)は、昨日8回戦の5局が東京と大阪の将棋会館で一斉に指され、結果は以下のようになった。
三浦弘行八段(6勝2敗)−●谷川浩司九段(5勝3敗)

丸山忠久九段(5勝3敗)−●郷田真隆九段(4勝4敗)

木村一基八段(4勝4敗)−●森内俊之九段(4勝4敗)

○高橋道雄九段(5勝3敗)−●井上慶太八段(3勝5敗)

藤井猛九段(3勝5敗)−●佐藤康光九段(1勝7敗)
(左側先手)

注目の首位攻防直接対決は、先手番の三浦八段が対谷川戦の先手番勝率8勝1敗というデータ通り(ちなみに、今週発売の週刊将棋によれば、谷川−三浦戦は昨日の対局までに先手番の17勝3敗(両者の対戦成績は10勝10敗のタイ)というデータが載っている)の強さで勝ち、一歩抜け出した。また、挑戦権争いに残れるか否かが注目された丸山−郷田戦は丸山が勝って挑戦権争いに踏みとどまった。一方で、挑戦権争いと残留争いが絡んだ森内−木村戦は木村が勝って、残留決定。森内は昨年に続いて8回戦で挑戦の目を絶たれた。また、今期復帰してきた同士の対決となった高橋−井上戦は高橋が勝って残留を決めると共に、挑戦権争いに踏みとどまった。井上八段は木村八段との9回戦に全てを託すことに。
そしてもう一つの大一番、残留争いの佐藤−藤井戦は中盤に藤井が放った鬼手が炸裂し、日付が変わった午前0時過ぎに藤井勝ち。この結果、名人2期を含め、14期連続で在籍したA級の座から佐藤が陥落することとなった。
朝青龍ではないが、「いつかはこういうことが」ということは、避けられない事である。だけど、「まさか彼らに」という思いがどこかにあったのもまた事実である。それくらい羽生名人をトップとするこの世代への信頼度というのは高かったんですが…。傷心を癒す間も無く、佐藤九段は今日、明日行われる棋王戦第1局を戦うために中国・上海へ移動。ショックは大きいでしょうが、佐藤さんらしい将棋を指して欲しいと思います。

8回戦を終えての現況は以下の通り。

6勝2敗…三浦弘行八段(8位)
5勝3敗…丸山忠久九段(4位)、谷川浩司九段(7位)、高橋道雄九段(9位)
4勝4敗…郷田真隆九段(1位)、森内俊之九段(3位)、木村一基八段(5位)
3勝5敗…藤井猛九段(6位)、井上慶太八段(10位)
1勝7敗…佐藤康光九段(2位)

9回戦の組み合わせは以下の通り(左側先手)

郷田−三浦
佐藤−丸山
森内−藤井
木村−井上
谷川−高橋

三浦は勝てば挑戦権獲得。敗れた場合、谷川−高橋の3敗対決があるのでプレーオフとなる。また、藤井、井上の2人に絞られた残留争いは、井上はとにかく勝つのみ。藤井は敗れた場合井上の結果次第となる。A級陥落が決まった佐藤だが、最終戦の相手丸山はプレーオフの可能性を残す。「自分にとっては消化試合だが、相手にとって重要な対局ならば、全力で相手を倒す」という米長理論を実践できるか。
それぞれの思いが交錯する最終9回戦は3月2日、東京・千駄ヶ谷将棋会館で一斉に行われる。また今期も「将棋界の一番長い日」がやってくる…。