16年前の悪夢、再び

昨年9月から熱戦が繰り広げられてきたアジアリーグアイスホッケー2012-2013は、3月30日に行われたプレーオフ・ファイナル第4戦で、レギュラーリーグ2位の東北フリーブレイズが、1位の王子イーグルスを1-0で下し、対戦成績3勝1敗として2年ぶり2回目のリーグ優勝を果たした。
フリーブレイズは一昨シーズン、リーグ加盟2年目で初優勝を果たしたが、その時は東日本大震災の影響でファイナルが中止となり(開幕前日に震災が起こった)、アニャンハルラと同時優勝という結果だったので、単独優勝は初めてになる。まずはこれについておめでとうございます、と言いたい。
さて、我らが王子イーグルスであるが、今シーズンは開幕10連勝というこれ以上にない好スタートを切り、勝点102(34勝8敗)という圧倒的な数字でレギュラーリーグを1位通過(2位・フリーブレイズとの勝点差は22点)。昨年12月に行われた全日本選手権も8年ぶりに制し、正に絶好調の状態でプレーオフに挑んだが、アニャンハルラ(レギュラーリーグ4位)とのプレーオフセミファイナルまでは良かったものの、ファイナルになるとそれまでの戦いが一変、リーグ最多得点(199点)を叩きだした攻撃陣が沈黙してしまい、さらに持ち味である堅守も、第3戦の第1ピリオドに一挙4点を失うなど、レギュラーリーグの戦いがウソのように変わってしまい、結局第1戦を先勝後、3連敗という形でシーズン完全制覇(アジアリーグレギュラーリーグ、プレーオフ全日本選手権)を逃してしまった。
実は王子、今回に近い負け方で、優勝を逃した経験がある。
1996年(平成8年)のシーズンは、前2シーズン日本リーグ(当時)で優勝を逃したことと、創部70周年という節目を迎えたこともあり、日本リーグのタイトル奪還と全日本選手権制覇による二冠達成が至上命題となっていた。実際シーズン開幕直後からの王子は好調で、リーグ前半を11勝3敗1分け(勝点23)で1位で折り返し、後半さらに勢いを加速させて結局22勝4敗4分(勝点48)で1位通過。2位の西武鉄道(当時)に勝点11点差を付けてのものだった。
ところが、いざプレーオフに進むと雪印とのセミ・ファイナル1回戦でまさかの敗戦。その後の2戦は圧勝してファイナルに進んだものの、西武との対戦となったファイナルでは2試合とも逆転負けで覇権奪回に失敗、という苦い結果に終わってしまった(ちなみに、翌年3月に長野で行われた全日本選手権では決勝でコクド(当時)に2-8という信じられないスコアで葬られ、18シーズンぶりにタイトルなし、という最悪の結果に終わった)。
当時のチームキャプテンである高木英克(のちに王子監督)は、この時のプレーオフについてこう語っている。

「悔しかったですね。一番の原因は気の緩みです。ずっと1位をキープしてきて、プレーオフに出場できる安心感から緊張の糸が切れてしまった」(アイスホッケーマガジン(ベースボールマガジン社)1997年11月号、日本リーグチーム情報から)

今回の結果は、精神的なものが招いたのかどうかは分からない。プレーオフMVPに輝いたフリーブレイズGK・畑の好守や攻撃陣に勢いがあったのも事実である。しかし、最後は「何が何でも単独優勝!」というフリーブレイズの執念の前に負けたような気がしてならない。
また、私的な話になってしまうが、今回あまりにレギュラーリーグから調子が良すぎたため、プレーオフでもやってくれるはず、という期待値が大き過ぎた。阪神タイガースで散々「期待し過ぎると裏切られた時のショックが大きくなる」ということを教わったはずなのに・・・
今回敗れたことで、OB諸氏からは強い風当たりが来ていることだろう。正直私もまだ悔しい気持ちを引きずっている。しかし、この敗戦が、来シーズンへの糧になってくれるものと信じている。常勝は王子の宿命であり、また最近はどのチームも実力接近で勝つことは大変だが、来シーズンこそ笑ってシーズンを終えたいものだ。