聖地消滅…?

シーズンオフ真っ只中の日本アイスホッケー界に、衝撃的ニュースが飛び込んできた。

王子製紙スケートセンターを閉鎖(苫小牧民報社)
王子製紙は11日、苫小牧市表町4の王子製紙スケートセンターを今月30日付で閉鎖する、と発表した。築56年を経過して、老朽化が著しく進み、建物と設備を今後も維持、修繕するのに掛かる費用が「数億円単位」になるため。今秋、持ち株会社制に移行するなど、経営情勢を踏まえて「やむなく判断した」(工場幹部)と言う。再利用、解体・撤去など施設の今後は白紙だ。王子イーグルスの練習のほか、シーズン中は各種大会や合宿、市内外のチームの練習場として、フルに利用されてた施設だけに、ホッケーや大会誘致関係者は困惑している。

 苫小牧工場によると、建築から半世紀以上を経て施設、設備全体が著しく老朽化。施設の維持費用はこれまで年間数百万円単位で支出していたが、今後利用を継続するためには屋根の腐食の補修、冷却装置関連の更新など大掛かりな投資が必要。新たに数億円単位が必要と見込んでいる。

 スケートセンターは例年、フル稼働に近い状態で利用されている。イーグルスの練習はもとより、「昨シーズンも10月から3月まで学校、社会人チーム、高校生などの練習や合宿、大会や大会の練習場など、連日切れ目なく利用されていた」(同工場)と言う。今年は4月6日に解氷して以降、対外的な利用は断っていた。

 同工場は発表に先立って7日、苫小牧市に閉鎖を報告。イーグルスの練習リンクとして市内のリンクの使用を要請した。岩倉博文市長は「非常に残念。歴史を誇る氷都のシンボルだった。今後関係者と相談しながら、再考を求めていきたい」と話した。

 工場幹部は「ファンは動揺するかもしれないが、チームは今後も維持する。そのために経済的に負担の大きなリンクを閉鎖する判断をした、という面もある」と打ち明ける。苫小牧市は昨年8月、ハイランドスポーツセンターの屋内リンクを廃止しており、相次ぐ屋内リンクの閉鎖でスケート文化を支える「氷都」苫小牧の存在感と役割は揺らぎそうだ。

98年の長野冬季五輪後、日本アイスホッケー界は古河電工雪印西武グループのアイスホッケー活動からの撤退など、ショッキングなニュースばかりがクローズアップされてきたが、今回の報道はそれらの出来事をも吹き飛ばしてしまうほどの衝撃である。ましてや、それが我が贔屓チームである王子イーグルスに係わる問題となれば、尚更である。
王子製紙スケートセンターは様々な名勝負、名選手を生みだしてきた。84-85シーズン、86-87シーズンの日本リーグでは王子のリーグ優勝決定の舞台ともなっている。また、78-79シーズンの日本リーグ最終第四次リーグはここで行われ、連覇目前の国土計画(当時)を西武鉄道が逆転したのもここである。そして苫小牧は釧路と並ぶ日本アイスホッケー界のメッカだけに、王子の選手のみならず、日本を代表する名選手の多くがここでプレーし、育った場所でもある。
また、自分の生まれた80年代中盤から後半にかけてはアイスホッケー中継がかなり盛んだった(今では信じられないだろうが)。我が家に眠っているアイスホッケー中継のビデオは、大体ここでの試合(王子・コクド戦)が主体である。それだけに、来訪したことはないものの、思い入れもある。
王子のみならず、日本アイスホッケー界の歴史そのものとも言えるリンクだけに、関係各位には最善の策を打ち出してもらいたいものだが…

関連:王子製紙スケートセンター 56年の歴史に幕(2012年6月11日)(アイスホッケー情報誌Breakaway公式)